増刊号 Common Disease 200の治療戦略
消化器疾患
吸収不良症候群
星野 恵津夫
1
1帝京大学医学部第2内科
pp.133-135
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904016
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疾患概念と病態
吸収不良症候群とは,吸収不良のみならず消化不良も含めた概念であり,消化・吸収の過程(消化管腔内での消化,消化管粘膜での吸収,門脈/リンパ系での輸送)の何らかの障害により,摂取された食物中の栄養素が十分に利用されない状態を総称する.栄養素の吸収部位は,蛋白質・脂肪・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)は小腸全域であるが,糖・鉄,ビタミン類の多くは主として上部小腸であり,胆汁酸・ビタミンB12は回腸下部である.外科的切除や広範な粘膜障害などでは,障害部位の違いにより特定の栄養素が欠乏することになる.栄養素の点からは,脂肪・蛋白質.糖質・胆汁酸・葉酸・ビタミンB12・脂溶性ビタミン・鉄・亜鉛・Ca・Mgの吸収不良があるが,臨床的に頻度の多いものは脂肪吸収障害,乳糖不耐症,胃切除後の鉄・ビタミンB12吸収障害である.
中性脂肪の吸収には,膵液・胆汁が正常に分泌され,腸管内でのリパーゼによる中性脂肪の脂肪酸とβ-monoglycerideへの分解,および胆汁酸によるミセル形成,さらにリンパ系が正常なことが必要である.
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