カラーグラフ Oncology Round・13
胸腔内出血と肺動脈塞栓症を併発した肝細胞癌の1例
高橋 幸則
1
,
武越 裕
1
,
池田 栄二
2
,
片山 勲
3
1東京都済生会中央病院・内科
2東京都済生会中央病院・病理
3埼玉医科大学・第1病理
pp.2335-2339
発行日 1990年11月10日
Published Date 1990/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900608
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肝細胞癌は,欧米に比べて本邦に多い悪性腫瘍のひとつである.しかも,日本肝癌研究会による2年毎の原発性肝癌の全国登録症例数をみると,1982〜83年の5,567例から1984〜85年の7,320例へと年々の増加傾向も認められている.診断は,近年盛んに開発されている腫瘍マーカーと画像診断(超音波,CT scan,血管撮影)により以前よりはるかに容易となっており,そのため早期発見,完全治癒癌切除による長期生存例も報告されている.しかし,肝癌患者のうち切除手術が実施されるのは,いまだに17.1%(1989年,厚生省第5次悪性新生物実態調査)と少ない.過半数を占める手術不能症例に対しては,動脈注入による化学療法,肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial emboli-zation;TAE),エタノール局所注入療法などの延命を図る治療法が活用されている.
今回提示する肝細胞癌症例は,初診時すでに肝全体に娘結節を有するStage IV-Aであったが,数回のTAEにより,3年6カ月におよぶgoodquality of life(職場を含む日常生活への復帰)を伴う延命効果が認められた.
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