特集 腹部外科の臨床
研究と報告
巨大肝膿瘍を併発した肝包虫症の1例
片山 勲
1
,
菊地 敬一
1
1慶応義塾大学医学部外科
pp.1215-1217
発行日 1965年9月20日
Published Date 1965/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203741
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包虫症は,条虫Echinococcus granulosus,または,Echinococcus multilocularisが,人間を中間宿主として偶然に寄生することによつて起こる疾患である.その主な発生地域は,シベリア,北欧,南米など,日本では礼文島に地方病的に存在していることが知られている.その症例は比較的稀なもので,山下1)によれば,本邦では1956年までに単房性包虫症49例,多房性包虫症32例,計81例が報告されているに過ぎない.
昭和25年,慶大外科において,診断困難な腹部腫瘤を主訴とする症例を開腹したところ,肝に無数の小嚢胞を発見,これを手術的に一部切除してともかく一時的に軽快退院した多房性包虫症の一例がある.この患者が最近になつて,弛張性高熱と腹部腫瘤を主訴として再入院した.これは肝包虫症に合併した単発性巨大肝膿瘍で,切開,排膿により寛解させることができた.非常に興味ある症例と思われるので,ここに報告する.
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