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循環器は非専門医にとって恐怖の分野ではなかろうか.非専門医の気持ちを代弁するなら,「緊急を要する可能性もあり,手を出せない」,「自分がしたことで,よくないことが生じたら(そのせいではないときでも)どうしよう」であろう.著者・監修者の杉崎先生は,循環器のトビラは「開けなきゃいけないけど,ちょっと二の足を踏む」重厚なトビラと表現され,そういうことを少しでも払しょくするために,循環器内科医と非専門医の共通言語になりうることを目的として本書を企画された.内容はエビデンスやガイドラインに沿っており,さらに著者らの豊富な経験のもとわかりやすく書かれている良書である.
本書は急性冠症候群(ACS),安定冠動脈疾患(CAD),心不全,不整脈,下肢閉塞性動脈疾患,周術期などに関する14章から成り立つ.第1章で取り上げられているACSは,非専門医もよく遭遇し循環器内科医に適切にコンサルトすべき疾患で,専門医と非専門医が共通概念で動く必要度が高い.心電図でSTが上昇していればST上昇型心筋梗塞で「door-to-baloon time 90分を目指し循環器医コール」,と非専門医は比較的行動がとりやすい.一方,困るのが心電図でSTが上がっていないときである.それについて,リスクに分けたマネジメントが解説されている.すなわち,誰がみても不安定な患者,例えば,胸痛が持続,胸痛が再発,血行動態が不安定,STが下がりっぱなし(進行性の虚血,左主幹部病変による虚血や後壁梗塞ですぐに心臓カテーテルが必要),不安定な不整脈などはすぐに冠動脈造影を行い,一見落ち着いていてもGRACEスコアなどで点数が高い高リスク群は24時間以内など早期に冠動脈造影を行う,といった具合である.こういったことが共通概念になっていると,非専門医はとてもやりやすい.専門医と非専門医が共有しておくべきことが各章にまとまっている.非専門医はこういったことを知っておき,専門医にアセスメントとプランをある程度述べることができるように本書を熟読することをお勧めする.
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