書評
—佐藤 智 著—「生きる」そして,「死ぬ」ということ
丸地 信弘
1
1東大医学部保健学科
pp.880
発行日 1985年10月10日
Published Date 1985/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207064
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医の原点をわかりやすく
佐藤医師は昭和46年に,東村山市の「ねたきり老人訪問看護事業」を開始し,その後,保健文化賞を受けた方である。昭和55年より"ライフ-ケア-システム"を開始し,会員制の24時間ケアに取り組んでおられる。
本書は日刊紙「経済往来」に連載されたものである。一般読者にわかりやすい表現を取りながら,医の原点を極めて具体的に述べている。これらは30年以上にわたる臨床経験に加え,無医村や地域ケア,さらにインドでの生活体験に基づいている。とりわけ,医師と患者と看護婦が医療の二大要素であると実感し,三者が「共有の場」を持つことの重要性が説かれている。著者自身が家族への在宅ケアを体験しているので,死を在宅でむかえる時の,患者,家族の気持ちが十分に理解され,さらに豊富な臨床体験から,それらが意味づけされている。このため,本書自体,医師と患者と看護婦のだれが読んでも納得のいく内容となっている。迫りくる高齢化社会,医療不信,ターミナル-ケア,そして国際協力に対する不安が,本書を読み進むうちに解消されるという不思議な読後感がある。
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