特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン
Column
そもそも,なぜ人間にとって医療が必要なのか?
細谷 辰之
1
1福岡県メディカルセンター保健・医療・福祉研究機構
pp.845-847
発行日 2022年5月10日
Published Date 2022/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402228256
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最初の逡巡
「人間にとって医療が必要である」と断言できる根拠を見出すのは容易ではない.命あるものは例外なく死に至るのであって,「必ず訪れる死を少しばかり先延ばしにしたから何だ」という問いに,誰もが納得できる解を提示できる知力は筆者にはない.しかし,あらゆる生物の営みが,死を免れないのにもかかわらず,生きようとする意思に満たされているように見えることは,死とうまく付き合う方法の一つとして医療が存在する意義は,ありそうだ.また,医療の果たす役割は,死を先延ばしにすることだけにとどまらない.苦痛を緩和し,障害の程度を和らげ,「死」を迎えるまで続く「生」をより快適なものにする「力」が期待できる.「生」とは何か? 「死」とは何か? この問いに戸惑いながら本稿を進めたい.
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