書評
—浦島充佳 著—《ジェネラリストBOOKS》—外来でよく診る 病気スレスレな症例への生活処方箋—エビデンスとバリューに基づく対応策
大谷 泰夫
1
1神奈川県立保健福祉大学
pp.501
発行日 2019年3月10日
Published Date 2019/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402226093
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これまでは人間の健康状態を健康か病気かという二分法で区分して対処してきた.しかし,その両者は連続した変化のなかで存在している.特に生活習慣病の分野では,人はある日突然病気に陥るのではなく,予兆段階を経て発症し,重篤化していく.こうした流れを念頭に置いて,従来型の健康観とは異なった,個人の自立的意思や予防・回復努力を重視した新しい健康観「未病」が提唱されている.
本書でいう「グレーな症例」への対応策は,まさしくこの未病的な健康観に符合するものと思われる.これはわが国で通例行われている医療スタイル,すなわち公的医療保険が想定する医薬品や手術に依拠する典型的な治療方法に一石を投じる新時代のスタイルである.治療の手段として,運動や食事療法を重要な選択肢に加えた「生活処方箋」という考え方は,健康寿命の延伸をめざす人生100年時代という人生の健康サイクルに目を向けた注目すべき方法論である.
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