書評
—志水太郎 訳—診断推論のバックステージ—ワンランクアップのための診断推論教育11の要点—Teaching Clinical Reasoning
清田 雅智
1
1飯塚病院総合診療科
pp.683
発行日 2017年4月10日
Published Date 2017/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402224880
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臨床推論の能力は,医師の診断能力の高さに相関するに違いない.患者さんから①病歴を聞き②鑑別疾患を絞り③身体所見を取り④検査所見にて診断を確定するという作業は,おそらく20世紀になり行われてきたと思われる.近年,画像,採血などの検査の役割が強力になり,④>>③で診断するという傾向が強まるのも時代の流れであろう.一方,診断エラーは,患者予後を悪くする.それを防ぐには①,②の精度を上げることであろう.しかし,このトレーニングの方法論は,実際には不確実なものばかりである.それで,私はこのような方法論を学んでも深い臨床推論能力を獲得することはできないと思っていた.出会った疾患を深く学び,機会を得ては更に学ぶという反復が,深い知識と見識を生む.これには10年1万時間という歳月が必要だということを,他の職業の例からも実感している.多くの医師はこの歳月を経て,自分の医師としての能力を実感しているのではなかろうか.
Lawrence Tierneyの一番弟子とされるGurpreet Dhaliwal医師を,臨床推論能力を持った教育者のエキスパートとして私は尊敬している.第8章を担当しているが,上記のような経験だけではエキスパートにはなれないことを語っており,彼なりの方略を示していた.私は俄然この本の見方を変えた.
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