特集 抗菌薬の考え方,使い方—ホントのところを聞いてみました
尿路感染症
膀胱炎
羽山 ブライアン
1
1がん研究会有明病院感染症科
pp.1008-1010
発行日 2016年6月10日
Published Date 2016/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402224220
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Question 1
最近は大腸菌でもESBL産生菌が増えてきていると聞きますが,膀胱炎ではどんな抗菌薬を使用すればよいのでしょうか? ホントのところを教えてください.
Extended spectrum β-lactamase(ESBL)産生大腸菌は確かに増えています.しかし結論から先に言うと,膀胱炎の治療においては,(現時点では)あまり心配する必要はありません.なお,膀胱炎の大半は外来での単純性膀胱炎(以下,膀胱炎)であり,尿路に何らかの障害がある複雑性膀胱炎や,入院患者での膀胱炎の治療は個別の事情で異なる部分が大きいためここでは述べません.
膀胱炎の起因菌はほとんどが大腸菌で,最近のある研究でも起因菌が判明したうちの85%が大腸菌です1).そして,院内でも市中でも,大腸菌の耐性化は近年世界的な問題で,特にESBL産生菌の問題は顕著です.欧州ではESBL産生大腸菌の分離頻度が25%を超える国がイタリア,ルーマニアなど数カ国あり,ブルガリアではなんと40%超です2).アジアや南米,アフリカでは一層深刻で,例えばタイで健康成人の調査をすると46%にESBL産生大腸菌の保菌がみられたという報告もあります3).日本では良い疫学データがなく正確な頻度は不明ですが,西日本のある単施設の報告では,9年間の調査期間中経時的にESBL産生大腸菌が増え続け,2011年時点で大腸菌の院内検体の20%以上,外来検体でも10%以上を占めています4).少なくとも対岸の火事ではないことがわかります.
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