くすりの効きめ・10
われ幻の薬をみたり(1)—膜の内側に薬があるか?
鈴木 哲哉
1
1実中研
pp.1226-1227
発行日 1968年10月10日
Published Date 1968/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223080
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薬のゆくえは糸のきれたタコのようなもの
へたな鉄砲も数打ちゃ当たるという教訓がある.鉄砲玉のようにたいへんなスピードで,かつまっすぐに飛んでいくものでも,打ち手がへたくそだとなかなか当たらないものだということである.どうしてこんな話を冒頭にもってきたかというと,薬を内服して病気を治すという現象が,鉄砲打ちが鉄砲玉を獲物に当てることよりもずっと複雑だということに日本の臨床家が早く気づかなくてはいけないということがいいたいからである.
私はかつてある薬学者たちの集まりで製薬会社は少なくとも自社の製品については,それがどのような形で血中にあって,どのような形で尿中へ出るかぐらいはつかんでおいてほしいものだという希望を述べて笑われた経験があるが,将来はともかく現在大部分の薬はどこを通って,どうなってどう身体の外へ出ているものやらをわからせることが至難の業なのである.
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