増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第4集
血液検査
44.アンチトロンビンIII
櫻川 信男
1
1富山医科薬科大学・検査部
pp.1732-1733
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222733
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血管壁は陰性荷電を帯びて血小板や白血球などの付着による障害を防ぎ,その内皮細胞にはプロスタサイクリン,プラスミノゲン・アクチベータ,トロンボモジュリンやグリコサミノグリカンズを産生して血栓の形成を抑制し,血流のスムーズな流動を維持している.アンチトロンビンIII(AT III)はグリコサミノグリカンズ(GAG)と複合体を形成して,凝固亢進によって血中に出現する活性型凝固因子(セリン蛋白分解酵素)のうち第Xa因子やトロンビンを強力に阻害してトロンビンによるフィブリン形成を抑制している.AT IIIの他にヘパリン-コファクタII(HC II)も同様に作動するがトロンビンのみを阻害する2).AT IIIはGAG(デルマタン硫酸,ヘパリン硫酸,コンドロイチンポリ硫酸,ヘパリン)(ヘパリンは微量にしか存在しない)のうちのデルマタン硫酸とは複合体を形成せず,HC IIはすべてのGAGと結合する.AT IIIの欠乏状態ではHCIIがこれを代替している.
AT IIIはGAGがないと第Xa因子やトロンビンを緩徐に抑制し(遅効性阻害),GDGが存在すると速効性(即時性阻害)に抑制するが,AT IIIの欠乏や異常による即時性阻害作用の欠如では凝固阻害に障害が惹起されて血栓症が併発される1〜3).これらを確認するためには生物学的測定法と免疫学的手技による抗原量を測定する.
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