増刊号 臨床血液検査
II.止血機能検査
2.検査の実際と症例の解釈
2)凝固検査
A.検査法
(10)アンチトロンビンIII
新谷 憲治
1
,
櫻川 信男
1
1富山医科薬科大学臨床検査医学教室
pp.235-238
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906522
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■測定の意義
アンチトロンビンIII(ATIII)は,セリンプロテアーゼ・インヒビター(serpin)ファミリー1)の一員で,血液凝固因子のトロンビンや,活性化第X因子(F. Xa),活性化第IX因子(F. IXa)を不活化する重要な血漿因子である.このAT IIIの最も特異的なところは,その抗トロンビン作用が,ヘパリンの存在で約1,000倍にもスピードアップされる点にある(progressive inhibitorからimmediate inhibitorとなる)2).ATIII以外にもう一つ,ヘパリンにより抗トロンビン活性の増強される血漿因子が存在し,ヘパリンコファクターII(heparin cofactor II;HC II)と呼ばれている3).
ATIIIはヘパリンとトロンビンに対して異なった結合部位を持つ.トロンビンはATIIIのC端に位置するArg393-Ser394のペプチド結合を切断し,その結果フリーとなる断端Argのカルボキシル基とトロンビンの活性中心に位置するセリンの水酸基がアシル結合して複合体を作り不活化される4).一方,ATIIIのN端側にあるTrp49,Arg47,Pro41などのアミノ酸残基やこの付近に集まっているLys残基などがヘパリンの結合に深くかかわっている5〜7).
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