検査
検査データをどう読むか
岡嶋 研修
1
,
宇治 義明
1
,
岡部 絋明
1
1熊本大学医学部・臨床検査医学教室
pp.1606-1610
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222688
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患者:31歳,女性.主訴は左半身脱力.家族歴:図1に本症例の家系図を示す.両親はいとこ同士であり,発端者の兄弟のうち一番上の兄は生下時に死亡しているがその原因は不明である.父方の祖父の兄弟3人に脳梗塞の既往を認める,既往歴:17,23,29歳時に右上下肢の血栓性静脈炎および脳血栓によると思われる左半身麻痺を認めた.29歳の時からは抗血小板剤を服用していた.現病歴:約1週間前より感冒様症状に引き続き,一過性の左上肢の脱力,右上肢の知覚異常および右眼の視力低下を認めた.さらに頭痛,嘔気および嘔吐が出現したため熊本大学病院第1内科を受診する.受診時,意識状態は清明,身体所見では右下肢の循環不全のための潰瘍形成を認めるのみであった.反復性の血栓性疾患の治療およびその原因精査のため直ちに第1内科入院となる.入院時検査所見:入院時の血液学的検査所見より小球性低色素性貧血(鉄欠乏性)を認めた.凝血学的検査所見(表1)では可溶性フィブリンモノマー複合体陽性,FDP(E)およびD-ダイマーの増加を認め,かなり強い過凝固状態が惹起されていると考えられた.アンチトロンビンIII(AT III)活性(抗トロンビンヘパリンコファクター活性)は28%と著減,しかしAT III抗原量はむしろやや増加していた.protein C,S活性は正常,ヘパリンコファクターII(HC II)活性はやや低下していたが抗原量は正常であった.
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