今月の主題 輸血の実際と血液製剤
内科医のための輸血の実際
慢性貧血の輸血
山口 潜
1
1虎の門病院・血液科部
pp.589-592
発行日 1989年4月10日
Published Date 1989/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222393
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●輸血の歴史
1955年前後には,わが国では輸血用の血液は病室近辺の処置室などで職業売血者から,10%クエン酸ナトリウムを抗凝固剤として用いて100ml注射筒に採血し,これをただちに入院中の受血者に点滴でなく濾過装置も通さずに直接静注する方法が一般的であった.「枕元輸血」と呼ばれている方法である.この際,クロスマッチもほとんど行われず,供血者の持参した手帳にある既往歴,Hb量,血清梅毒反応所見程度の記載事項と,供血者耳朶血のABO式の「おもて」試験,Sahli法によるHb定量のみから輸血の可否を決定するという,実に危険な輸血法が採用されていたわけである.
伝染性疾患に関しては,血清梅毒反応の陰性所見と既往歴の自己申告が手帳に記入されているだけで,肝機能の詳細はまったく不明で,輸血後肝炎が大きくとり上げられたのは比較的新しいことである.1964年,日本赤十字社が献血のみによる血液製剤の供給を開始してから,輸血後肝炎は激減した.
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