病気のはなし
溶血性貧血
山口 潜
1
1虎の門病院血液科
pp.326-331
発行日 1977年5月1日
Published Date 1977/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201341
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溶血性貧血とは
"溶血"という言葉は,赤血球,白血球,血小板のいずれにも適用されうる用語であるが,通常赤血球について使われている.特に"溶血性貧血"という場合には,"赤血球の血管内寿命が短縮し,骨髄その他における造赤血球能がこれを代償しえずに貧血の発現をみる病態"と定義される.
まず"貧血"とは,血液の単位容積あたりの血色素冠及び/または赤血球数が正常値以下に減少した場合をいう.成人では男女とも血色素量11g/dl,赤血球数350×104/μlあたりを限界とすることが適当であろう.日常診療にあたって,血色素量の低下が赤血球数の低下に比べて著しい低色性貧血(日本人ではこの状態は鉄欠乏性貧血とほぼ同義)及び軽度ないし中等度の正色性貧血である二次性貧血の両者が,いわゆる貧血患者の大部分を占めるので,血色素量の低下だけで貧血を定義しても大過はないが,Addison悪性貧血の一部症例では,血色素量が11g/dl前後のレベルでも赤血球数が250×104/μlぐらいで,ビタミンB12欠乏症に特徴的な著しい神経症状を呈することもあり,上に記したように貧血の定義としては"血色素量及び/または赤血球数の減少"とするほうが合理的と考える.
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