講座 肺癌診療・9
肺癌の治療の現況(2)小細胞癌の治療
国頭 英夫
1
,
江口 研二
2
1東京大学医学部・第4内科
2国立がんセンター・内科
pp.336-345
発行日 1989年2月10日
Published Date 1989/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222337
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概観
小細胞癌は全肺癌の15〜20%を占めるにすぎないが,①早期にリンパ行性・血行性転移をきたすこと,②抗癌剤・放射線療法に感受性が高いこと,という生物学的な特徴をもっている.1960年代までは小細胞癌は肺癌の中でもとくに悪性度が高く,早期に遠隔転移をきたして死亡する(median survival time;MSTは無治療例ではlimited diseaseで14週,extensive diseaseで7週1),stagingについては後述)ものとして恐れられていた.手術をしても延命には寄与せず,一見切除可能と思われるclinical stage I-II(TNM分類については本シリーズNo. 4,1988年8月号の福田らの総説を参照)の症例でも5年生存率は1割にも満たない2)という惨憺たるものであった.
1960年代より放射線療法が導入され,1973年には手術療法と放射線療法との無作為対照比較試験(randomized controlled study,RCS)にて後者のほうが優れているとの結果が出された3).さらに全身療法として,cyclophosphamide(CPA)の使用成績4)から,有効な多剤併用レジメンが次々と開発され,治療の主力は次第に化学療法・放射線療法へと移っていった5,6).
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