今月の主題 内科医のための癌治療のオリエンテーション
癌治療のためのオリエンテーション
免疫療法は有効なのか
近藤 誠
1
1慶応義塾大学医学部・放射線科
pp.232-234
発行日 1989年2月10日
Published Date 1989/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222313
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
免疫療法が有効かと問われれば,否と答えるしかない.どの免疫療法も有効性は証明されていない.議論の前に,日本での免疫療法の現状を一瞥しよう.
昭和62年の推定売上げ高をみると,クレスチン(PSK)が720億円で全医薬品中第2位,ピシバニール(360億円),レンチナン(110億円),フエロン(Interferon β;INF-β)が(70億円)と,いわゆる免疫調整剤が上位を占めている.後述のように免疫療法で1人余計に治癒したかどうかも分かっていないのであるが,日本の癌治療費の10分の1以上が使われているのである.確実に治癒患者を量産している放射線治療の総額が60億円でしかないのと比べると,奇異というより不当である.アメリカでは,これらの薬は認可されていない.わずかに,INF-αが毛髪球性白血病に限って認可されているに過ぎない.2,400頁からなる癌の教科書で,クレスチン,ピシバニールは,わずか半頁しか紹介されていない1).一方,日本の教科書,専門雑誌を読むと,免疫療法は行わなければいけないかのような印象を受ける.このギャップの原因を考えねばならない.
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.