講座 図解病態のしくみ 循環器疾患・8
頻拍性不整脈—1.発作性上室性頻拍
山口 巌
1
1筑波大学臨床医学系・内科
pp.2536-2543
発行日 1988年10月10日
Published Date 1988/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222166
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発作性上室性頻拍(paroxysmal supra-ventricular tachycardia,PSVT)は,3種類の不整脈発生機序,すなわちリエントリー,異常自動能,triggered activity(撃発活動)のうちの1つが原因で発生する.このうち最も一般的な機序はリエントリーである.リエントリー回路は,房室間あるいは房室結節心室間副伝導路を伴うもの,あるいは単独で,洞結節,心房,房室結節に含まれる.リエントリーが発生するためには,異なる伝導特性と不応期を有する2種類の伝導路(縦解離)と,これらの伝導路を結ぶ共通の末梢連結路を必要とする(図1).例えば心房性期外収縮による刺激がAに進入し,不応期により逆行伝導路Cでブロックされる一方,順行伝導路Bに伝導し,順行伝導路に伝導遅延があるとき,逆行伝導路の興奮性が回復し,刺激は共通路を経由して,逆行伝導路に進入し,リエントリー回路のもとの地点に再び戻る.このように興奮波の持続的伝播によって持続性回帰性不整脈が生じる.
PSVTの発生機序には,その他に異常自動能があり,心房や房室接合部の自動能が洞結節脱分極発生頻度より高頻度に自動脱分極する.もう1つの自発調律はtriggered activityであり,活動電位は先行する活動電位から発生する遅延後脱分極から生じる.
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