増刊号 診断基準とその使い方
V.内分泌
22.インスリン受容体異常症A型およびB型
葛谷 英嗣
1
1京都大学医学部・第2内科
pp.1911-1913
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221946
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■疾患概念
インスリンが標的細胞でその作用を発現するためには,細胞膜に存在するインスリン受容体との結合が最初のステップとして必要である.この受容体はαとβの二つのサブユニットがそれぞれ2個ずつdisulfide bondによって結合し細胞膜に存在していると考えられている(図).αサブユニットは分子全体が細胞外にあり,インスリン結合部位を有する.βサブユニットは細胞膜を貫通しており,その細胞内の部分にはチロシンキナーゼが存在している.チロシンキナーゼはインスリン結合のシグナルを細胞内に伝達する上で重要な役割を演じているらしい.
さて,インスリン作用障害は,インスリン受容体レベルや受容体後のインスリン作用機構での異常によって起こる.前者は先天的あるいは後天的な原因により細胞膜のインスリン受容体数が減少したり,数の減少はなくとも機能に異常があったり,あるいはインスリンの受容体への結合が阻害されたりした場合に起こる.1976年Kahnらは黒色表皮症acanthosis nigricansとインスリン抵抗症を示す6名の女性を,"syndrome of insulinresistance and acanthosis nigricans"として報告した1).
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