増刊号 診断基準とその使い方
III.消化管
14.虚血性腸炎
水谷 謙二
1
,
馬場 正三
1
1浜松医科大学・第2外科学
pp.1814-1815
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221905
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■疾患概念と疫学
1)概念
腸管の虚血により生じる病変に対して様々な呼称があるが,最近ではischemic bowel disease(虚血性腸病変)が用いられている.虚血性小腸炎の報告はまれであるので症例を呈示するにとどめ(図),本稿ではischemic colitisを中心に述べる.1963年Boleyらは,主幹動脈に閉塞がないにもかかわらず大腸に虚血性病変が発症し,可逆的に治療した症例を報告し,reversible vascular occlusion of the colonという概念を提唱した.その後1966年になってMarston1)らが,血行障害に起因する病変が大腸の炎症性疾患に類似することから,これを総合的にischemic colitis(虚血性大腸炎)として報告して以来,一疾患単位として認められるようになり,最近本邦においても報告例が増加している.
ischemic colitis(虚血性大腸炎)の臨床像は「50歳以上の高齢者で,腹痛,下血,下痢を主訴として発症し,左側結腸に好発して特徴的な注腸造影や内視鏡所見を呈し,一過性に軽快することの多い症例」とされている.早期に本疾患に気づけばその診断は比較的容易である.
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