今月の臨床 高年婦人科—更年期から老年期へ
一般症状の診かた,とらえ方
18.頻尿と尿失禁
大井 好忠
1
Yoshitada Ohi
1
1鹿児島大学医学部泌尿器科
pp.946-947
発行日 1992年8月10日
Published Date 1992/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900968
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高年者には多くのrisk factorがあり,高年婦人も例外ではない。分娩回数が多くなるにつれ経産婦の腎の負担,膀胱・尿道周囲組織へのdamageは高まり腹圧性尿失禁もこのような背景と加齢による括約筋の脆弱が加わって発現すると考えられる。高年化に従って子宮の悪性腫瘍の発症頻度は高まり,根治的子宮摘除術後には婦人科的泌尿器科疾患が高率に発症する。術後に尿意を感じない,骨盤神経損傷に基因する末梢神経傷害型の神経因性膀胱患者は多い。無緊張性膀胱となり残尿が多く腎機能が障害されることになる。尿管に対する影響も無視できない。水腎症が発症すれば尿量は増加し多尿となり頻回に排尿する。脳梗塞・脳出血・パーキンソン氏病・糖尿病・HAM脊髄症など中枢神経疾患,代謝性疾患でも神経因性膀胱は発症する。したがって,頻尿,尿失禁という泌尿器科的症状においても全身的な診察が必要となる。
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