実践診療dos and don'ts
医師の不安,他
山田 治
1
1川崎医科大学・総合診療部
pp.767
発行日 1988年5月10日
Published Date 1988/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221652
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川崎医大総合診療部の外来でみる患者は紹介状を持たず,受付看護婦の聞き取りでも,明確な専門が不明な患者が受診する.
38歳の男性が,血便を主訴として受診した.日頃から,下痢と便秘を交互に繰り返しており,ここ数日は便秘していたとのことで,硬い排便後に,新鮮な血液が滴り落ちた,と心配そうに訴える.貧血は認めず,血圧や脈拍も正常で,全身状態は良好である.型通りの直腸指診と肛門鏡により内痔核を認めた.患者に出血の原因は痔核からのものであり,緩下剤と坐薬の挿入を行うように説明した.しかし,患者から「それ以外の部位からの出血の可能性はないか?」,「消化管の悪性腫瘍は大丈夫か?」と矢継ぎ早に尋ねられ,「ひょっとすれば」という自分の不安もあり,注腸検査,上部消化管造影を指示した.悪性疾患の可能性は少ないと考え,2週間先の検査予定を入れ,その間薬剤を使用するように指示した.2週後に患者は現れず,しばらくして患者と会ったところ,検査の予定日までとても不安で待ちきれず,すぐ翌日,他の胃腸科を受診し,検査を受けたとのことであった.検査上異常は認めず,同じ病名を告げられたという.しかし,本人は検査を済ませ,やっと安心できたとのことであった.
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