今月の主題 消化性潰瘍とその周辺
消化性潰瘍の管理
潰瘍症
岡部 治弥
1
1北里大学東病院・内科
pp.460-461
発行日 1988年3月10日
Published Date 1988/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221580
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■消化性潰瘍は全身疾患
Palmer EDが,peptic ulcerは全身性疾病であるのに,不幸にして局所の潰瘍(組織欠損)をそのまま病名としているために,ややもすると,一臓器の病変と見なされがちであると述べてあるのを読んで,なるほどと思ったのは,もう20年以上の昔である.その本が何であったか,今定かでないが,ふと思いついて,書棚の中からPalmer EDのClinical Gastroenterology,Second Edition 1963(初版1957年)年版をとり出して見ると,D.u.の項により精しく同様のことが述べられている.それを紹介すると,
「消化性潰瘍は日常の診療にきわめて一般的な疾患であるために,この疾患に対する医師の取り扱い方は驚くほど定形化され,患者の個性,特性は全く無視されている.その診断と治療には型にはまった方法がすすめられて来ており,潰瘍治療薬の効果の判定は患者群の相対的治癒率を基にして判断されている状態である.また,逆に一人の患者にbestであったものは,すべての患者に最良であると見なされてしまうのである.その結果として,本疾患は他のどの消化器病よりも患者の特性の認識が必要とされるものでありながら,全く個性の消失となってしまっている.
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