今月の主題 消化性潰瘍とその周辺
消化性潰瘍の成因
微小循環
佐藤 信紘
1
1大阪大学医学部・第1内科
pp.402-404
発行日 1988年3月10日
Published Date 1988/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221562
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消化性潰瘍は字のごとく,消化液による消化管粘膜の潰瘍性病変を指すが,ulcus pepticumと名づけれたのが19世紀中頃ときくので,古くから原因が特定化されていた病気である.これは消化液がきわめて多量に分泌されるために生じるか,消化液には著変がなくても粘膜抵抗が低下したために生じる.前者の典型はZollinger-Ellison Syn-dromeであり,後者の典型はストレス潰瘍である,後者は,ストレス(精神的および肉体的)により粘膜抵抗の減じた際に生じるが,ストレスのみでは小さな病変しか生じず,ストレスの際に,あるいはストレス後に消化液が粘膜抵抗の減弱の度合に応じて共存すると,臨床的に問題となる病変が生じる.消化液の関与は粘膜抵抗の減弱が著しいほど小さく,少量の酸で大きな潰瘍ができる1).酸の関与が少ないと考えられる老人性胃潰瘍や,萎縮の強い高位胃潰瘍でもH2ブロッカーが卓越した効果を示すのは,これらの潰瘍ではそれだけ粘膜抵抗が弱まっているため,少量の酸が攻撃因子として大きな意味を持つのである2).
最近,粘膜抵抗については,粘液,重炭酸分泌,プロスタグランディン,細胞回転,血流といった種々な面から解明が進み,粘膜防御を高める薬剤も数多く開発され,潰瘍の成り立ち,患者の背景を考慮したきめ細かい処方が可能となった.
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