今月の主題 白血病とリンパ腫
白血病の治療
成人T細胞白血病(ATL)—話題の疾患
土肥 博雄
1
1広島赤十字病院・内科
pp.66-67
発行日 1988年1月10日
Published Date 1988/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221481
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成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia;ATL)は,成人に発症する,胸腺腫大を伴わない末梢T細胞性白血病である.なかには悪性リンパ腫として経過する症例もある.末梢血に異常細胞が多数出現している割には,骨髄浸潤は軽度であることが多い.本疾患は高月らのグループによりはじめて記載され,九州に多発している1,2).
ATL患者の血清中にはHTLV-I(human T cellleukemia virus-I)抗体と呼ばれる抗体が存在し,腫瘍細胞のDNAにHTLV-Iと呼ばれるレトロウイルス(RNA型ウイルスでRNAからDNAへの逆転写酵素を内蔵している.電顕的にはC型粒子として確認される)の鋳型がプロウイルスDNAとして組み込まれている.このウイルスが何らかの機序でT細胞の癌化(白血病化)を起こしていると考えられることより,ヒトの癌化とウイルスの関係で非常に脚光を浴び,精力的な研究がすすめられている.また,HTLV-Iの研究が類似のレトロウイルスによって起こるAIDSの研究を大いに支えたことは周知のことである.
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