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成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL/ATLL)は,HTLV-1(human T-cell leukemia virus type-1)の感染により引き起こされるT細胞のリンパ腫である.flower cellと呼ばれる異常リンパ球の増加を主体とした白血球増加,リンパ節腫脹,皮膚病変,ATL細胞の浸潤による臓器障害,LD(lactate dehydrogenase)高値,高カルシウム血症,日和見感染症などが出現する1〜3).日本の九州・沖縄地方,中央アフリカや中南米が好発地域である.最近わが国では,九州・沖縄地方以外の発症が増えている.ATLは,臨床的にくすぶり型,慢性型,リンパ腫型,急性型の4病型に分類される(→表1)4).くすぶり型・慢性型は低悪性度ATL,リンパ腫型・急性型は高悪性度ATLとされる.
HTLV-1はレトロウイルス科に属するRNAウイルスである.HTLV-1キャリアが生涯においてATLを発症する確率は約5%であり,大多数のキャリアは生涯無症候のままである.ATLの発症は通常40歳以降であり,平均68.3歳である.HTLV-1キャリアは,わが国では西南日本沿岸部を中心に約110万人存在する.主な感染経路には,母乳を介した母児感染,男女間感染,輸血の3つがあり,母親がキャリアであった場合は母乳栄養児の20.5%が感染すると報告されている(人工栄養児では2.4%).
治療としては,急性型,リンパ腫型,予後不良因子(LD,アルブミン,BUNのいずれかひとつ以上が異常値)を持つ慢性型では,多剤併用化学療法が施行される.若年者では同種造血幹細胞移植も検討される.最近では,ATL細胞の表面に発現しているケモカイン受容体のCCR4に対するモノクローナル抗体(モガムリズマブ)が臨床応用されている.
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