今月の主題 免疫不全とAIDS
AIDS
AIDSの治療
中村 健
1
1帝京大学医学部・小児科
pp.2748-2750
発行日 1987年12月10日
Published Date 1987/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221449
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AIDSの病因がウイルスであることがわかってから,対AIDS戦略は具体的になって来た.ウイルス病の対策として基本的な戦略は,社会的対策を除けばワクチンによる予防と抗ウイルス剤による治療である.AIDSでは免疫系が侵され,日和見感染をみるので,免疫増強剤療法と日和見感染に対する治療が加わる.
ウイルス病に対する戦略は,抗ウイルス剤の開発がきわめて困難であることから,これまではワクチンの開発による予防が主流であった.天然痘では種痘により,天然痘を地球上から絶滅するのに成功している.麻疹が同様な目標になっている.ポリオはわが国から絶滅させるのに成功している.しかし毎年のワクチンの接種を試みながら,インフルエンザ(Flu)の流行の阻止は必ずしも成功していない.この原因の一つに,流行するFluの抗原が毎年変異を起こして変化することがあげられる.流行する抗原を予測して,ワクチンに使用する抗原を毎年変えてFluワクチンは作成されている.しかし予測が外れることはありうる.AIDSの病因ウイルスであるHIV(humanimmunodeficiency virus)はFluウイルスの抗原変異よりも激しく,感染を受けている生体内ですらかなり抗原変異を起こす.これまでのウイルスのエンベロープの部分を使うワクチン開発の技術とは異なる方法を取らないと,AIDSに有効なワクチンは得られない.
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