増刊号 これだけは知っておきたい薬の使い方
Ⅲ 呼吸器疾患治療薬
呼吸器一般薬の使い方
72.去痰薬の使い方
長岡 滋
1
1東京都立広尾病院・呼吸器科
pp.1918-1919
発行日 1987年9月30日
Published Date 1987/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221192
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痰の物理・化学的性状についての研究が進展している欧米では,去痰薬の作用機序に対して,わが国とはかなり相違する考え方がもたれている.わが国では,去痰薬は,気道の分泌増加を介しての希釈,または,薬物の化学作用に基づく溶解により,痰の粘稠度を低下させる作用を示す薬剤であるという考え方がいまだに普遍的であり,1982年に日本工業技術連盟より出版された薬学大事典においても,去痰薬は,「気道粘膜からの分泌を促進し,あるいは喀痰を溶解することにより,喀出を容易にする薬物である」と定義づけされている.そして,各種去痰薬が,それぞれの作用機序の特異性が十分に考慮されないまま画一的に使用されている.
一方,欧米においては,痰のような物質は水分を添加しても分散も希釈もされないこと,および,粘稠度があるレベル以下に低下すると線毛により輸送されにくくなることが報告されており,各種去痰薬の適切な使い分けの必要性が強調されているのである.
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