今月の主題 糖尿病診療の現況
糖尿病の診断とコントロール基準
ヘモグロビンA1,A1cの臨床的意義
老籾 宗忠
1
1神戸大学医学部・第2内科
pp.24-25
発行日 1987年1月10日
Published Date 1987/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220753
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HbA1あるいはHbA1cは,hemoglobin(Hb)と糖の非酵素的結合で生ずるglycosylated Hbである.Hbに糖が結合することによって陰性荷電をもち,通常のHbA0に対して電気泳動上陽極側に易動度をもつためHbA1と名付けられた.さらにイオン交換カラムを用いてHbA1を分離すると,HbA1a,HbA1b,HbA1cと,HbA1は大きく3つに分けることができる.臨床上の問題から,HbA1cがHbA1の大半(約70%)を占め,血糖変化に最も変化を受けやすいため,HbA1cがHbA1の代表のように考えられてきた.
一方,生体におけるnonenzymatic glycosylationはHbA1の存在から注目されてきたのであるが,この反応はHbのみならず広く種々の蛋白と糖との間にも生ずる反応で,Maillard反応と称され,自然界に存在する普遍的な蛋白と糖との結合反応である.たとえば,蛋白食品を加熱調理するときに生ずる褐色調への色の変化は褐変現象ともいわれ,この反応の1つである.Hbのβ鎖N端valine,あるいはlysineのε-amino基などに糖が非酵素的に結合することによってglycosylationが成立し,Schiff base結合,さらにこれがAmadori転位してketoamineになる.このSchiff base結合のものまでは可逆反応であるが,Amadori転位するとほぼ不可逆性になる(図).
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