今月の主題 血流障害と血栓・塞栓症
診断
ベッドサイドでのみかた—静脈血栓症
安田 慶秀
1
,
田辺 達三
1
1北海道大学医学部・第2外科
pp.2018-2019
発行日 1986年12月10日
Published Date 1986/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220627
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深部静脈血栓症の病態
下肢の深部静脈血栓症は手術後,外傷,分娩,内科疾患などによる長期臥床など臨床のあらゆる領域で経験されるほか,明らかな原因なしに健康な人に突然発症することもある.本症は時に重篤な肺塞栓症を併発するほか,適切な初期治療が行われないと静脈炎後遺症に至り,下肢の皮膚炎,二次性静脈瘤,下腿のうっ滞性潰瘍など難治な慢性血行不全をきたし患者を苦しめるため,早期に正しい診断と適切な治療が必要とされる疾患の一つである.
下肢深部静脈血栓症の発生部位は総腸骨静脈から腓腹筋内静脈までいずれの部位にも見られるが,解剖学的に血流停滞をきたしやすい外腸骨静脈領域,総大腿静脈領域,深大腿静脈領域,膝窩静脈領域,後脛骨静脈領域,腓骨筋領域の6部位を起点として発生し,血栓は中枢側,末梢側のいずれの方向にも進展する.血栓の発生部位,進展速度,側副血行の状態などによって臨床像もさまざまに変化する.血栓が末梢の小範囲にとどまり側副血行路が十分にできた状態ではほとんど症状を示さない.
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