カラーグラフ リンパ節疾患の臨床病理
転移性リンパ節腫瘍
山科 元章
1
,
片山 勲
1
1埼玉医科大学・第1病理
pp.1581-1584
発行日 1986年9月10日
Published Date 1986/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220542
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リンパ節への癌転移を病理学的に検索する際には,診断学上2つの異なった状況が考えられる.1つは,臨床的に原発不明の癌がリンパ節転移を初発症状とした場合で,病理学的に原発巣を転移癌の組織像から同定し得ることが少なくない.他の1つは,臨床的に知られた癌巣の根治術に合わせて,あるいは原発巣の摘除後に,癌進展の範囲を確認し治療をすすめていく場合で,リンパ節内の癌転移の有無が組織学的に問題とされる.
組織形態学的には,リンパ節に癌転移をきたした場合,まず最初にリンパ節の辺縁にある周縁洞(marginal sinus)に腫瘍細胞巣が形成されることはよく知られている.その後,腫瘍細胞の増殖に伴い,髄洞,髄質,皮質へと拡がり,最終的にはリンパ節全体が腫瘍によっておき替えられる.さらに,腫瘍はリンパ節被膜を破り,周囲の結合組織にも浸潤することがある.これらの過程で,腫瘍の進展はhostの免疫学的反応と競合し,リンパ節内で腫瘍の発育が制限をうけ,ときには,リンパ節が関門となり,それ以上の癌進展が防がれることも考えられている.
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