カラーグラフ リンパ節疾患の臨床病理
エイズにみられるリンパ節腫脹症
山科 元章
1
,
片山 勲
1
1埼玉医科大学第1病理
pp.2109-2112
発行日 1986年12月10日
Published Date 1986/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220651
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1981年に米国で初めて報告されたエイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)は,その病気の原因がHTLV III型(ヒトT細胞白血病ウイルスの3型)あるいはLAV(リンパ腺症関連ウイルス)と呼ばれるレトロウイルスであることが明らかにされた.このウイルスの外殼には,ヒトのヘルパーT細胞の表面にみられる受容体蛋白に親和性をもつ糖蛋白があり,ヒトの体内に侵入すると特異的にヘルパーT細胞に感染することもわかってきた.
この感染の結果から,①B細胞などの免疫応答にかかわる機構を刺激するT細胞特有の物質を分泌しなくなり,②T細胞自体も,ヒトに侵入する微生物を認識する機能がなくなり,③T細胞は増殖しなくなる.そして,④患者のT細胞は著しく枯渇してしまう.したがって,このウイルスに感染すると免疫力が極端に低下し,通常なら人体に何の害も及ぼさないカリニ原虫,カンジダ真菌,非定型好酸菌あるいはサイトメガロウイルスなどによる日和見感染症がひき起こされる.また,カポシ肉腫などの悪性腫瘍の発症を伴い,典型的なエイズの病像がみられる.
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