今月の主題 狭心症—各種治療手段の適応
狭心症へのアプローチ
狭心症の概念とその治療目標
泰江 弘文
1
,
堀尾 豊
2
,
奥村 謙
2
1熊本大学医学部・循環器内科
2熊本大学医学部・内科
pp.1476-1477
発行日 1986年9月10日
Published Date 1986/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220510
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狭心症の概念
狭心症は心筋が一過性に虚血に陥るため,すなわち心筋の代謝に必要な十分量の血液が供給されなくなるために生ずる,特有な胸部不快感(狭心痛)を主症状とする臨床症候群である.心筋の虚血とは,とりもなおさず心筋の酸素の需要に対して供給が追いつかずに心筋が酸素欠乏に陥ることを意味する.図は心筋における酸素の需要と供給とを規定する種々の因子と虚血の結果として出現する種々の病的状態を示したものであり,図の上半左側には心筋の酸素需要を規定する因子,すなわち心筋の収縮性,心拍数および左心室壁の張力が示されており,右側には心筋への酸素の供給を支配する因子,すなわち冠循環が示されている.正常ではこれらの因子の適切な働きによって,心筋における酸素の需要と供給は均衡に保たれ心筋は酸素欠乏に陥ることはない.これらの因子に障害が起こり,この均衡が破れると心筋は虚血に陥り,その結果として狭心痛を主とする自覚症状,心電図上は虚血性変化と呼ばれるSTの上昇または下降,あるいは不整脈,または心筋の代謝異常として乳酸,水素イオンおよびK+などの産生,心室の機能障害として虚血部心筋の壁運動の異常や左室拡張終期圧の上昇,あるいは駆出率の低下などの病的状態が出現する.
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