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狭心症は心筋が一過性に虚血つまり酸素欠乏に陥ったために生ずる臨床症候群であるが,心筋の酸素欠乏は心筋における酸素の需要と供給が不均衡に陥ったために生ずる。狭心症は冠動脈に動脈硬化による器質的狭窄が存在するために労作によって生ずる心筋の酸素需要の増加に対して供給が追いつかずに発生すると説明されてきた。この考えは1940年代にBlumgartらによって狭心症患者の多数の剖検例においてほとんどの症例に冠動脈に広範かつ高度の器質的狭窄が認められるという一連の報告がされてから決定的なものとして受け入れられた。
これより以前,1910年にOslerにより冠動脈の攣縮が狭心症の原因であるという考えが出されていたが,この説は根処のないものとして棄却された。労作による心筋の酸素需要の増加が狭心症の原因であるという考えがいかに熱狂的に受け入れられたかは,1950年代から1970年代にかけて心臓病学の教科書としてBibleのごとく読まれていたFriedbergの"Diseases of the Heart"の狭心症の定義のところに
"Angina pectoris is a clinical syndrome……,preci—pitated by effort or emotion,and relieved by rest ornitrites.Certain elements may be atypical but the occu—rrence of the pain or pressure with effort is an essen—tial element of the syndrome…….The pain of angina pectoris may occur at rest,but if it dose not also occur with effort or cannot be reproduced by bodily exertion the diagnosis of angina pectoris may be questioned."と記載されていることからもうかがい知ることができる。
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