今月の主題 消化器薬の使い方
肝疾患
肝硬変の治療薬の使い方
大和 滋
2
,
林 茂樹
1
1東京大学医学部・第1内科
2国立病院医療センター・消化器科
pp.608-609
発行日 1986年4月10日
Published Date 1986/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220305
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肝硬変は慢性肝疾患の終末像ではあるが,幅広い病像を有している.わが国の肝硬変の成因は,ウイルス性とアルコール性とで90%以上を占めており1),それぞれ特徴ある病態をもっているため,この点を考慮に入れた対策が必要となる.ウイルス性肝硬変では,病態が活動性か否かが問題となり,アルコール性肝硬変では,断酒できるかどうかが治療上重要なポイントとなる.また,肝機能の面では,その低下が軽度で症状を現さない状態(代償期)か,機能低下が著しく,腹水や黄疸,肝性脳症を生じた状態(非代償期)かを把握することが大切である.
肝硬変の基本的病態は,その成因にかかわらず,肝実質細胞の変性・壊死とその後に起こる線維増生であり,治療の主眼はこの2点に向けられなければならない.肝実質細胞の変性・壊死の阻止を目的として,B型肝炎ウイルス関連のウイルス性肝疾患には,各種インターフェロン,Ara-A,-AMPによる抗ウイルス療法が導入され,慢性肝炎から肝硬変への進展防止に一定の効果があることが示されており,さらに本年1月より,B型肝炎ウイルスの母子間感染予防を主目的としてB型肝炎ワクチンが発売され,B型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患の予防・治療については明るい未来がある.
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