今月の主題 消化器薬の使い方
消化性潰瘍
粘膜保護剤の使い方
石森 章
1
1東北大学医学部・臨床検査診断学
pp.574-575
発行日 1986年4月10日
Published Date 1986/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220292
- 有料閲覧
- 文献概要
□潰瘍治療における粘膜保護剤の位置づけ
消化性潰瘍の病因・発生機序は,治療との関連から2段階に分けて考えるのが便利である.すなわち第1段階は潰瘍発生の契機となった直接の原因で症例毎に異なるのが特徴であり,対策もそれぞれ異なる.これに対して第2段階は第1段階の結果惹起されたいわゆる攻撃因子・防御因子間のバランスの喪失に基づく胃液による組織消化の過程であり,全症例に共通である.したがって,第2段階の治療は失われたバンランスの回復を目標とし,病態生理学的特性に基づく症例毎の多少の調整は残されているものの,原則として全症例に一律に実施される.
消化性潰瘍の原因療法は,上述のように症例特異的な第1段階治療と,全症例に共通な第2段階治療からなるが,第1段階治療は実地診療上原因の究明が必ずしも容易でないことを反映して実施に困難を伴うことが多いのに対し,第2段階治療は潰瘍治療の主流を占めており,表のように分類される.すなわち,失われたバランスは攻撃因子対策すなわち胃液の消化力抑制と防御因子対策の二面から回復されるが,粘膜保護剤は後者に属し,相対的に弱体化した粘膜側の防御力を補強することを目標としている.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.