今月の主題 腎疾患—最近の展開とトピックス
尿細管疾患:病態生理に関する進歩
家族性低リン血症性ビタミンD抵抗性クル病
清野 佳紀
1
1大阪大学医学部・小児科
pp.1770-1773
発行日 1985年10月10日
Published Date 1985/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219964
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概念
本症は著明な低リン血症とクル病(骨軟化症)を示す,いわゆる症候群である.小児ではクル病として発見されるが,成人では骨軟化症を示す.1937年Albrightらは,本症がビタミンDに抵抗性を示す疾患であり,その結果,腸管におけるCa吸収が低下し,そのためPTHの分泌亢進をきたし,低リン血症をきたす結果,クル病を発生するという仮説をたてた.しかしながらその後,RIA法(radioimmunoassay)によりPTHを測定してみると,本症では血中PTH濃度は正常ないし軽度に上昇しているのみであり,しかも血中PTH濃度が上昇している症例では,治療として経口的にリン酸塩の投与を受けている場合が多いことが判明した.さらにArnaudら,Lewyら,Fanconiら,筆者らはすべて本症のPTH濃度を正常と報告している.
したがって現在,本症は先天的なリン転送障害が主因とされており、とくに腎尿細管と腸管におけるリン再吸収ならびに吸収障害の結果,低リン血症を発症し,クル病あるいは骨軟化症をきたす疾患と考えられている.
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