今月の主題 白血病—最新の知見と治療の進歩
病態と診断
白血病細胞の分化能とその制御
穂積 本男
1
1埼玉県立がんセンター研究所・化学療法部
pp.1534-1536
発行日 1985年9月10日
Published Date 1985/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219907
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白血病細胞の発生機序に血液幹細胞の分化の異常が関与することを示唆する知見は多い1).他方,白血病細胞の中には異常な遺伝子の発現を示唆する事実が,最近,数多く報告されている1,2).これらの知見は,白血病細胞が血液幹細胞の後天的な増殖,分化の調節機構の異常によって発生する可能性を示すとともに,白血病細胞の分化能の発現を示唆する.
近年,実験動物やヒトの諸種骨髄性白血病培養株細胞が多様な分化誘導物質によって,成熟白血球や赤血球様の細胞に分化することが明らかにされた1,3).また,最近,リンパ性白血病培養株細胞の中にも,成熟リンパ球様の細胞に分化するものが報告されている1).白血病細胞の分化能は,樹立された株細胞のみではなく,白血病患者から採取した新鮮な白血病細胞や,in vivoにおいても認められる1,3).そして,白血病細胞の分化に伴い,細胞の増殖性や造腫瘍性は低下し,完全に喪失する例も明らかにされた1,3).したがって,このような白血病細胞の分化能と分化誘導に関する知見は白血病治療法開発の観点からも注目され,世界的に活発な研究が展開されている.本稿ではこれらの研究概要を紹介する.
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