今月の主題 胆道疾患診療のトピックス
最近における胆道感染症の対策
化学療法剤の選択と手術の時期
谷村 弘
1
1京都大学医学部・第2外科
pp.652-653
発行日 1985年4月10日
Published Date 1985/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219708
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急性胆嚢炎の診断法の進歩と手術時期
急性胆嚢炎の治療における最近の進歩は,CTと超音波検査の普及により胆嚢壁の状態が体外から容易に把握できるようになったことであり,加えて,抗生物質の飛躍的な開発とその臨床応用により,外科手術の時期が改めて論議されている.すなわち,初診時に確定診断がつかなくても,抗生物質投与を行いながら,経時的に超音波検査をくり返し,echogenicな壁内二重層形成,胆嚢内sludge,壁の全体的な肥厚または部分的な不規則性などから,壊死性胆嚢炎,胆嚢蓄膿症あるいは胆嚢周囲炎との診断ができ,胃・十二指腸潰瘍穿孔や結腸癌による腸閉塞などの急性腹症とは異なり,急性胆嚢炎は,最近ではそれほど緊急性をもたず,胆嚢摘出術を予定手術のスケジュールに組み込むことも多くなってきた1).
その手術時期から,緊急手術,早期手術,待機手術に分ける.胆嚢・胆管炎は,胆嚢炎の治療を優先するが,胆嚢摘出術そのものは手技的には完成されたとはいえ,術前の治療とその評価のために2日間を費やす必要性は現在でも変わらず,また炎症,易出血性,浮腫は7日間位では完全に消失することはなく,逆に急性期であっても,Mirizzi症候群(炎症性胆嚢による圧迫で総肝管が狭窄し,それより上流の胆管が拡張して黄疸をきたす症候群)を除けば,胆嚢管の処理は可能である.したがって,老齢などrisk不良を理由に外胆嚢瘻を造設し炎症の消退を待つことはほとんどない2).
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