今月の主題 心不全診療の動向
心不全の動向
木全 心一
1
1東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所・内科
pp.6-7
発行日 1985年1月10日
Published Date 1985/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219561
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診断技術の進歩
心不全の患者にSwan-Ganz熱希釈カテーテルが用いられるようになったとき以来,心不全についての知識が大幅に増加した.1本の細いカテーテルを肺動脈内に入れるだけで,心拍出量,肺動脈楔入圧,右房圧が適時測定できるようになった.3つの指標の組み合わせで,左室,右室のポンプとしての心機能を正確に評価できるようになった.
肺動脈楔入圧は,左室を収縮前に拡げる力であり,前負荷といえる.肺動脈撰入圧が正常でいながら心拍出量が正常に維持できているときは,左室のポンプ機能は正常である.左室の収縮性が低下すると,肺動脈楔入圧を上げて心拍出量を正常近くに維持している.これが心不全である.さらに左室の収縮性が低下すると,肺動脈楔入圧を上昇しても,心拍出量を十分にふやすことができず,心原性ショックとなる.心原性ショックは心不全の極型といえる.同じショック状態でも,脱水,出血,熱傷など体内水分が欠乏してショックとなるときは,右房圧が低下し,心拍出量も低下して,心原性ショックとは異なった病態であることが,はっきりと認識された1).
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