臨時増刊特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第3集
付録
付録3.臨床検査の正常値とその考え方
林 康之
1
Yasuyuki Hayashi
1
1順天堂大学医学部・臨床病理学
pp.2586-2587
発行日 1984年12月1日
Published Date 1984/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219512
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正常値の作り方
臨床検査各項目の正常値は,いわゆる健康人の測定値を求め,その平均値±2倍の標準偏差として表されている.いわゆる健康人と述べたのは,健康人を定義しようにも,厳密なことをいいだすと混乱するだけで健康人はいなくなってしまうからである.では,従来,そんないい加減なことで大切な正常値を作ってきたのかと反論されるかもしれないが,そのとおりなのである.最初の頃といっても30年以上前であるが,新しい検査法を臨床に導入するに当って,正常値を求めるという作業はきわめて簡単に身近な人たち数人〜10人ほどから検体を集め,その測定値をそのまま健康人正常値としていた.ところが,それではあまりにも無責任ではないかということで,集団を対象にして,せめて性別,年齢別に,そして,ある程度健康人としてのスクリーニングを行って決定するように変わってきたものである.それで,現在行われている正常値の作り方は,まず対象例を可能な限り検査を実施して,異常者を選別除外し,残った対象を健康人とする.そして,その健康人の測定値にさらに統計的処理を加えたものを正常値とする作り方である.この場合,性別,年齢別に対象を集めて現在利用されている正常値表ができあがることになるが,測定方法別に多少の偏差があるので,検査施設によって正常値が違うことになる.
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