今月の主題 糖尿病診療の実際
トピックス
膵移植
井上 修二
1
,
田中 克明
1
,
大川 伸一
1
Shuji Inoue
1
,
Katsuaki Tanaka
1
,
Shinichi Ohkawa
1
1横浜市立大学医学部・第3内科
pp.1052-1054
発行日 1984年6月10日
Published Date 1984/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219088
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インスリン依存型のI型糖尿病の治療には現在インスリン注射が実施されているが,毎日の注射による患者の苦痛や,注射療法によって血糖コントロールをしても合併症を完全に防げないという限界があり,より理想的な治療手段が求められてきた.今日インスリン注射療法に変わりうるものとして,人工膵臓と膵移植の研究開発が精力的に行われている.
人工膵臓に比べて膵移植の利点は,人工膵臓がなおインスリンを外から与えるため,患者の間歇的な苦痛は避けられないこと,インスリン投与のために注射針を長い間留置することによる感染,等の弊害,また日常生活において入浴時,その他で装置を外す必要がある,等の不便がつきまとうのに対して,膵移植は,もし成功すれば,一度の手術でその後の処置は不用であること,また完全治癒を期待できること,そして,動物実験によれば,合併症を治癒できない場合でも合併症を緩解する作用を有しているとされていることである.本論では,糖尿病治療としての膵移植の現況について解説する.
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