今月の主題 腎疾患—早期診断から管理まで
鑑別診断
腎盂腎炎
永瀬 宗重
1
,
東條 静夫
1
1筑波大学臨床医学系・内科
pp.416-417
発行日 1984年3月10日
Published Date 1984/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218932
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腎盂腎炎は一般細菌による腎盂・腎杯・腎実質の感染症である.歴史的には917年,Löhleinがpyelonephritisch Schrumpfniereの名のもとに,感染にもとづく腎病変を明らかにした時点まで遡ることができる.日常の診療活動の上で遭遇する頻度が高く,更に最近では本症の誘因として重要な膀胱尿管逆流現象(VUR)と予後不良な巣状糸球体硬化症(FGS)との関連もclose upされるに至っている1).
病原菌としては,大腸菌,肺炎桿菌,変形菌,緑膿菌が大半を占める.感染経路としては,血行性,リンパ行性,上行性感染がその大部分を占めている.誘因としては,尿路結石,尿管狭窄,VUR,留置カテーテルン等の局所的な因子と,妊娠,糖尿病,高血圧,カリウム欠乏状態などの全身的因子があげられる.臨床症状は,急性腎盂腎炎では,悪寒,戦慄,腰痛,側腹部痛等の定型的症候を呈し,その高い細菌尿の証明率からも比較的容易に診断しうるが,慢性腎盂腎炎の場合には,無床状のものから,全身倦怠感,易疲労性など不定の症状を伴うもの,あるいは消化器症状のみ強いものなどがみられ,診断には困難が伴う場合が少なくない.
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