天地人
含羞の虫
病める猫
pp.2833
発行日 1983年12月10日
Published Date 1983/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218830
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仕事の関係ではじめてアメリカ国内学会に参加する機会を得た.言語障害をもつ"日本人"という身の上では,極めて明瞭なデータをもっていくしかない.1年間余の夜なべ暮しの汗の結晶を,一言も発さずとも判るようにしてもって出かけた.ときは5月,ところはアメリカの中西部.ホテルと市内のconventional centerでの3日間.ポスターシンポジウムという半日をかけての討議に参加できて,わがポスターの前に緊張の面持ちで立ち,10名位の人の質問を何とかこなしたと感じた.総合討論は印象的であった.老いも若きもマイクをうばいあって列をなし,次々と質問または追加発言をするのである.幸い,私の狭き専門分野の英語なので何とか聴き取れたが,イギリスの学会長である女史から,私からみてもほんの若者まで,取るに足らぬと看過しそうなことまでしゃべりまくっていた.残念ながら,私は高見の見物気分,実は引込み思案というところで,"強い印象をうけた"と文をものする位が関の山である.
件のイギリスの学会長である女史(over sixty)には,この1年間に3回も御会いできる機会を与えられた.寒さにふるえるローザンヌの晩秋の学会では,オーバーコートなしに"with high quality"と端正な顔を向け,アメリカのシンポジウムでは30代の若者と討論する壇上の風情ときたら,遠目とひいき目にみて,チャーミングさ,イキイキ度は,若い女性も顔色なしである.
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