今月の主題 膵疾患診療のトピックス
トピックス
アミラーゼ産生腫瘍
滝山 義之
1
,
建部 高明
1
Yosiyuki Takiyama
1
,
Takaaki Takebe
1
1旭川医科大学・第2内科
pp.594-595
発行日 1983年4月10日
Published Date 1983/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218230
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中央検査施設の普及につれて,腹部愁訴を有する患者に対する血液生化学検査の1つとしてアミラーゼを測定する頻度は増加しつつある.これに伴って,主とじて膵疾患に出現すると考えられていた高アミラーゼ血症が,膵疾患を否定せざるをえない場合にみられる頻度もまた増加しつつある.この点に関して,4週間以上高アミラーゼ血症の持続している28例の腹痛患者について検討したLevittら1)の報告によると,初診時に全例が膵炎と診断されたが,その後膵管造影,腹部X線CTあるいは超音波断層によっていずれも膵疾患が否定されている.結局,血清isoamylaseの分析から8例はマクロアミラーゼ血症と診断され,残る20例ではS型アミラーゼの上昇が明らかにされている.
このように近年開発されたisoamylaseの分析法によって,高アミラーゼ血症のなかに膵疾患以外の病態が少なからず含まれることが,次第に明らかにされつつある.すなわち,正常血清に存在するアミラーゼは主として膵と唾液腺から由来するが,その他いくつかの臓器からも由来すると考えられている.したがって,膵や唾液腺以外の臓器の損傷,炎症あるいは腫瘍の場合にも高アミラーゼ血症は出現しうることになる.与えられた課題である"アミラーゼ産生腫瘍"も,実地上しばしば遭遇する高アミラーゼ血症の一因として位置づけられる.
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