講座 異常値の出るメカニズム・49 酵素検査(9)
血清アミラーゼ
玄番 昭夫
1
Teruo Gemba
1
1中央鉄道病院・中央臨床検査室
pp.931-937
発行日 1982年5月10日
Published Date 1982/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217772
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アミラーゼの臓器分布
血清アミラーゼ活性の測定は,1917年すでに臨床検査として行われていたように,酵素検査の中では最も古いものであるが,いまもってこの血清アミラーゼの臓器由来ほど不明な酵素はない.
アミラーゼ(α-amylase,EC 3.2.1.1,系統名は1,4-α-D-glucan glucanohydrolase)は,1,4-α-D-グルコシド結合をもつ多糖類(でん粉,グリコーゲンなど)から,このグルコシド結合を2〜4個有する寡糖類にまで幅広く作用し,これらのグルコシド結合を切断(加水分解)する酵素である.古くからアミラーゼは唾液や膵液に多く含まれており,糖質の消化に関与していることが知られてきた.しかし唾液腺や膵以外の臓器にも多少のアミラーゼが存在している.表1はラット組織におけるアミラーゼ活性の相対濃度を比較したものであるが1),十二指腸では膵の2.31%に相当する量のアミラーゼが存在する.しかしそれ以外の臓器アミラーゼは血清とほぼ同じか,それよりも少ない量であることがわかる.唾液腺は膵と同様にアミラーゼが多く,馬場2)によるとヒト唾液腺上清分画中のアミラーゼ活性は22,000IU/g蛋白であり,膵の21,200IU/g蛋白とまったく同じ値を示している.そして肺では36.31,肝では7.33IU/g蛋白で,それぞれ膵の0.17%,0.03%ときわめて微量存在しているにすぎない.
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