今月の主題 免疫からみた腸疾患
腸の免疫機構
腸リンパ組織の形態学
名倉 宏
1
,
玉置 憲一
1
Hiroshi Nagura
1
,
Norikazu Tamaoki
1
1東海大学医学部・病理学
pp.194-200
発行日 1983年2月10日
Published Date 1983/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218132
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健常人の消化管粘膜は,たえずきわめて多くの外来抗原,すなわち経口的に摂取された食餌性物質およびその分解産物,非病原性腸管内常在菌や病原微生物およびそれらの産生物質に暴露されており,生体側にはこれらの多量かつ多様な抗原物質を処理するために,消化管粘膜表面へ常時分泌されている分泌型IgA(sIgA)と,これら抗原物質に反応してsIgAの分泌を行う消化管リンパ装置(gut-associated lymphoid tissue:GALT)による局所免疫機構が備えられている.GALTはパイエル板(Peyer's patch),虫垂,腸間膜リンパ節および腸管粘膜固有層や上皮細胞間に分布している形質細胞やリンパ球を含めた,胃から直腸末端におよぶ広範な消化管所属リンパ装置の総称であり,脾臓や頸部リンパ節,末梢リンパ節とからは独立した免疫反応を示すといわれている1).
近年,単クローン性抗体の導入による免疫担当細胞の表面形質ならびに細胞質形質の詳細な分析とあいまって,これらGALTを構成する細胞の解析もすすみ,腸管粘膜の局所免疫機構におけるGALTの特有な免疫反応様式も解明されつつある2,3),本稿ではこうした点を踏まえ,その免疫反応の構造的基盤であるGALTの構造上の特徴について概説したい.
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