今月の主題 免疫からみた腸疾患
腸疾患の現況
川井 啓市
1
Keiichi Kawai
1
1京都府立医科大学・公衆衛生学
pp.192-193
発行日 1983年2月10日
Published Date 1983/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218131
- 有料閲覧
- 文献概要
腸疾患は,本邦では腸結核を除けば臨床の対象として疾患の頻度は比較的低かったし,診断学のうえからも長く「暗黒大陸」の状態に残されていた.その理由は何といっても,口腔からも,また肛門からも距離が遠く,X線検査にしてもお互いが重なり合って診断が難しかったことによるが,他にこの腸疾患の頻度の低さが,機能的な小腸性下痢をみることはあっても多くは一過性であるために,全体の関心を低くしたものと思われる.
しかしながら,最近では腸疾患の頻度はやや増加の傾向にあり,この傾向は現在のところ,むしろ大腸疾患において著しい.たとえば大腸癌,大腸ポリープ,憩室症などであり,抗生物質による医原性大腸疾患,虚血性腸炎も同様であるが,最近の関心は腸管炎症性疾患(inflammatory boweldisease;IBD)である潰瘍性大腸炎やCrohn病に向けられてきた.このIBDの問題によって,消化器病学の関心が勢い大腸から小腸疾患へ向けられたことになる.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.