講座 臨床薬理学 薬物療法の考え方・14
腎機能障害時の薬物投与法(2)
中野 重行
1
Shigeyuki Nakano
1
1愛媛大学医学部・薬理学
pp.1865-1874
発行日 1982年10月10日
Published Date 1982/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217980
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生体内で代謝されることなく,腎臓から尿中へ排泄されることにより除去される薬物を投与した場合には,腎機能障害時にその薬物の排泄が遅延する.この薬物排泄の遅延は,腎機能障害の程度により異なる.このような場合に,腎機能正常者に対するのと同じ方法で薬物投与を行うと,薬物が体内に蓄積してくるために,腎機能正常者に過量の薬物を投与したのと同様の結果になり,薬物による有害反応を生じうることになる.有効血中濃度域の狭い薬物や,毒性の強い薬物の場合には,とくにこの問題は重大である.そこで,腎機能障害時には,その障害の程度に応じて薬物投与法の調整を行う必要が生ずる.
血中薬物濃度を測定しつつ薬物投与法の調整を行っていくことは,とくに重篤な腎機能障害時には理想であるが,わが国の医療の現状では残念ながら不可能に近い.そこで,今回は,血中薬物濃度の測定値がえられない場合に,腎機能障害を有する患者に最適の薬物投与設計を行う場合の方法に焦点をあてることにする.
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