臨床薬理学 薬物療法の考え方・8
薬物の有害反応(2)
中野 重行
1
Shigeyuki Nakano
1
1愛媛大学医学部・薬理学
pp.1947-1953
発行日 1981年11月10日
Published Date 1981/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217411
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薬物療法においては,薬物の有害反応の出現を大なり小なり伴う.そこで薬物療法の有効性を高めるだけでなく,有害性を最小限にくいとめることは,臨床薬理学の重要な目的の1つである.このような薬物の有害反応は,種々な形で出現してくる.一般に最も高い頻度で認められる症状は,特別に細胞や組織の障害を伴わずに生体機能の障害により生ずるものであり,たとえば,嘔気,食欲不振,下痢,便秘,腹痛,頭痛,眠気,などである.しかし,これらの症状は,薬物療法中でなくてもよくみられる症状であり,確実に薬物に起因していると確信がもてる場合は比較的少ない.この種の症状が薬物による反応である場合には,通常投与量に関連しており,投与量が多いとき増加または増強し,投与量が減少すると減少または減弱する.また,症状の内容は,副作用(sideeffects)か過剰投与量(overdosage)のために生じたものであり,薬物療法を中止すると消失し,可逆性を有している.一方,薬物の有害反応には,肝障害や腎障害などのような非可逆的な症状も生ずる.この場合には細胞や組織の障害を伴っており,しばしばアレルギー反応により,あるいは薬物またはその代謝産物の働きにより生ずる.
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